2022/12/09 コラム
首なし事件
弁護士正木ひろし氏が体験した事件。実話。内容は概ね以下のとおり。
第2次世界大戦中の昭和19年,一人の炭鉱夫が逮捕される。
容疑は闇市での買い入れ。しかし,炭鉱夫は,容疑を否認した。
逮捕後,わずか二日目にして炭鉱夫は留置場内で死亡する。
警察の発表した死因は脳溢血。しかし,炭鉱の責任者は納得できなかった。
責任者は,弁護士正木ひろしに相談する。死因は警察の拷問ではないかと。※
正木ひろしは,検察庁に対して,炭鉱夫の死因を確かめるべく,司法解剖するよう要求。
(正木ひろしは,解剖学の教授から,死因が脳溢血か否かは
死体の首から上を調べれば 判明すると聞いていた。)
しかし,検察庁は既に検死は終了済みとし,これを拒んだ。
納得できない正木ひろしは,犯罪と知りながら,炭鉱夫の墓を暴き,首を切断。
解剖学の教授に炭鉱夫の首を渡し,鑑定を依頼。
その結果,炭鉱夫の死因が脳溢血ではないことを突き止める。
その後,裁判ではこの鑑定が決定的な証拠となり,事件は解決する。
※ 事件当時、被疑者の自白さえあれば裁判で有罪とすることができた。
そのため、警察が拷問によって被疑者の自白を迫るということも少なくなかった。
巨大な組織に対して,たった一人で戦いを挑んだ弁護士。その根幹にあるのは,
相手が誰であれ,不正は許さないという確固たる信念,正義感であろう。
なお,この事件の後も,正木ひろし氏は数々の冤罪事件の弁護に取り組んでいる。