2025/07/31 コラム
離婚後も子どもを最優先に ― 新しい親権制度に関する民法改正について
2024年(令和6年)5月に公布され、2026年5月までに施行が予定されている民法改正では、親権や養育費、親子交流に関する多くの新しいルールが導入されました。これらの改正は、離婚後の子どもの利益を最大限に守りながら、時代に即した家族法の在り方を目指したものです。今回は、改正の詳細や具体的な変更点について弁護士の視点から解説します。
目次
親権制度の見直し:子どもの利益を最優先に
今回の民法改正では、離婚後の親権や親子関係について以下のような重要な変更が行われました。
1. 父母の責務の明確化
- 婚姻関係の有無に関わらず、父母が子に対して負う責務があることが明確化されました(民法817の12)。
- 親権が子の利益のために行使されなければならないものであることが明確化されました(民法818等)。
2. 離婚後の親権者に関するルール
・協議離婚時の親権者指定
離婚時には、父母の話し合いによって「父母双方または一方」を親権者とすることが可能になりました。
協議がまとまらない場合、家庭裁判所が子どもの利益を最優先にして親権者を決定します。
・共同親権と単独親権の判断基準
父母双方が親権者となることが子どもの利益を害する場合(例:虐待やDVのおそれがあるケース)には、単独親権とすることが明確化されました(民法819等)。
※虐待やDVは身体的なものに限らず、心理的な影響も含まれます。
・親権変更時の考慮要素
離婚後の親権変更については、協議の経過や不適正な合意がされた可能性も考慮することが規定されました。
監護や養育に関する新たな規定
1. 親権行使の具体的ルール
婚姻中および離婚後において、父母双方が親権者である場合は「共同行使」が原則です。ただし、以下のような場合には、親権の単独行使が認められます(民法824の2等)。
- 子の利益のために急を要する場合(例:緊急の医療措置、DVや虐待からの避難)
- 監護及び教育に関する日常に関する行為(例:子どもの身の回りの世話)
意見対立を調整する裁判手続の新設
親権者間で意見が対立した場合に調整を図るための裁判手続が新たに整備されました。
2. 養育費の履行確保
法定養育費制度の導入(民法766の3等)
父母の協議がない場合でも、法定養育費として一定額を請求できる制度が導入されました。
養育費債権の優先権付与(民法306、308の2等)
養育費債権には「先取特権」が与えられ、債務名義がなくても差し押さえが可能になりました。
3. 親子交流の促進
調停や審判前の親子交流の試行的実施(人訴法34の4、家事手続き法152の2等)
審判・調停が開始する前の段階で、親子交流を試行的に実施する規定が設けられました。
別居中の親子交流の規律整備(民法817の13等)
婚姻中に別居している場合でも、子どもと非同居親の交流が確保されるよう新たな規則が導入されました。
父母以外の親族(祖父母等)の子との交流に関する規律整備(民法766の2等)
子どもと祖父母などの親族との交流を支援する規律が新設されました。これにより、祖父母が子どもと面会交流を求める場合の手続が簡略化されました。
弁護士が考える改正のポイントと注意点
◎ 子どもの利益を最優先にする仕組み
今回の改正は、親権者や養育費、親子交流などあらゆる面で「子どもの利益」を最優先に考えた設計になっています。特に、離婚後も父母双方が協力して子どもの成長を支える体制が強調されています。
◎ 課題への対処
一方で、改正がうまく機能するためには、以下の点に注意が必要です:
- 父母間の協議が円滑に進むよう専門家の支援を活用する。
- 親権や養育費に関する法的な理解を深める。
- 子どもの利益を尊重しつつ、親同士の対立を防ぐ仕組みづくりを進める。
まとめ:弁護士がお手伝いします
親権や養育費、離婚後の親子関係についてのルールは、今回の改正で大きく変わりました。
ときわ綜合法律事務所では、親権や養育費に関する相談、調停・審判のサポート、親子交流の実現に向けた取り組みなど、幅広くお手伝いしております。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
執筆 弁護士 白石知江

